第36章

とは言え。

全身を強く打った感覚に、僕は絶息する。

いつかの話ではないが、本当に神原は、左腕一本で僕を押し倒したのだった。場所は、ベッ

ドの上では――なかったけれど。

「な、何を――神原!」

僕はわめくが、神原はそのまま無言で、僕の上に折り重なるように、柔道でいう縦四方固め

のように、左腕だけでなく、全身をフルに使って、僕の動きを拘束する。右腕と左脚がこの状

況では、抵抗らしい抵抗など、できるわけが――否。

たとえ僕のコンディションが万全でも。

たとえ神原の腕が猿でなくとも。

神原が本気で僕を押さえつけようとしたら、相手になるわけがないのだ。全国区の体育会系

と、帰宅部の落ちこぼれである。年齢差など、体格差など、この場合、ちっとも問題にならな

い。どんなに暴れようとしたところで、まず身動きからできない。身体をぴったりと密着させ

られ、そんなに重くないはずの神原の肉体なのに、ずっしりと押し潰されそうにすら……

(ò﹏ò)

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